#003 減圧蒸留で引き出す、コーヒーの香りと余韻
焙煎で立ち上がる香りは繊細で、温度や時間のわずかな違いで表情を変えてしまいます。
その香りを蒸留という工程へ受け渡すにはどうすればよいのか、向き合い方が問われました。

蒸留は、香りを集める工程です。
そして同時に、何を残し、どこで手を止めるかを決める工程でもあります。
N°01 Coffee Spiritsは、目指す香りの方向性に照らし、減圧蒸留を採用しました。
常圧蒸留は、しっかり熱をかけて香りを立ち上げる方法です。
力強さや厚みが出やすく、香ばしさやふくよかな風味を取り出したいときに向いています。
一方、減圧蒸留は、比較的低い温度帯で香りを抽出することができ、繊細なニュアンスを崩しにくい。
クリアでフレッシュな香りを閉じ込めることが可能です。
「どちらが正しいか、優れているか」ではなく、「どう表現したいか」。
蒸留は、そうした選択の積み重ねです。

まず初めに取り掛かったのは、コーヒー豆を原酒に浸し、香りの土台をつくる工程でした。
時間をかけすぎれば重くなる。短すぎれば香りが立たない。
色や香りの様子を見ながら、程よい地点を探ります。
次に、豆の扱いをどうするか。豆はそのまま使うのか、砕くのか。
砕けば香りは出やすくなりますが、同時に余計な要素も出やすくなる。
だから、香りの透明感を守るために、豆の形はできるだけ残す。
その上で必要な分だけ、ほんの少しだけ手を加える。
そして、温度と圧のバランス。
高くしすぎれば、香りは強くなる代わりに繊細さを失いやすい。低く保てば、澄む代わりに、取りこぼすものもある。
その間を行き来しながら、香りの表情を確かめていきます。
さらに、豆を釜の中のバスケットに吊るし、蒸気に乗って立ち上がる香りも取り出すことで、香りの奥行きをつくっていきました。

そして、コーヒー豆の蒸留がある程度かたちを帯びはじめた頃、もう一つの工程が始まります。
コーヒーを主軸に据えたまま、それに寄り添う香りを探すこと。
積丹スピリットでは、ボタニカルを単体で蒸留し、あとからブレンドしていく方式を採用しています。
複数のボタニカルを合わせて蒸留するのではなく、香りを分けて確かめ、必要なぶんだけ重ねていく。
私たちが今回、パートナーとしてこの場所を選んだ理由のひとつも、まさにそこにありました。

積丹の現場で、私たちはさまざまなボタニカルの蒸留酒をテイスティングし、候補を五つ選びました。
それを東京に持ち帰り、コーヒーと並べてブレンドを繰り返す。
当初は、ジュニパーベリーを加えてジンの方向に寄せることも考えましたが、コーヒーの香りの上ではジュニパーベリーが強く立ちすぎてしまい、私たちが目指していた香りとは異なる方向性になってしまいました。
検討の途中では、PHILOCOFFEAの粕谷さんにもテイスティングの機会をいただきました。
その感覚も手がかりにしながら、最後に残ったのがキタコブシです。
運命的に、というより――最初からそこに在ったかのように。
いくつものボタニカルの香りを並べ、比率を変えて何通りもブレンドし、違いを確かめる。
その工程は、先日のローンチイベントでも“香りの比較”のプロセスの一部としてゲストの皆さまにもご体験いただきました。

次回は、ローンチイベント「N°01 Cofee SpiritsExparience」のレポートを届けいたします。